雨降って、ぢになる
デビュー戦のゆりもどしがきつい。そして言ってはいけないあの場所にあんなことが・・。
しかしうかうかしてはいられない。梅雨明けを待たず、富山県のショート・トライアスロン大会、そして真夏の能登半島で開催されるハーフ・トライアスロンに出ることにしたのだ。
ハーフはスイム2km、チャリ100km、ラン24km。デビュー戦のほぼ倍の距離である。それでも「ハーフ」の名前のとおりアイアンマンの半分だけど。
ひずみと解毒
トライアスロン初出場の帰還後、高熱にみまわれ1週間つづいた風邪が、やっと快方にむかった。
この病は、体力が極度に落ちたところのスキをつかれた。が、しばらく風邪をひいてなかっただけに、たまっていた身体や精神のよじれやひずみを解毒する作用があるような気がした。例になく長期化したが、それだけひずみも大きかったのだろう。
そんなふうに思えば鍛錬ができなくても今までのように焦ることもない。ワイフには無理をするなと言われているが、じっとしていることの方が俺にとっては明らかに無理している。ランニングを中心にふらふらしながらも、ちょっとずつやっていた。
すこし持ちなおしてきたころあいをみて、体に問いかけながら梅雨の中晴れの箱根へとチャリででかけた。
ところが箱根湯元の先の古い温泉街でパンク。
チャリで遠出や旅をする以上、パンク修理もだいじなテク。いらいらせずに、楽しんでやれるよう練習したいけど、パンクでもしてくれないとなかなか。
ディープリムのため、バルブの突き出しが少なく、エアーがなかなか入らず20分近くかかった。そういえばこの携帯用空気入れは使うのがはじめてだ。コツをつかんだのでよかった。
応急処置で一度家にもどり、リヤホイールごと交換して近場の石垣山登坂3往復。
右膝をかばいながら、弱い右膝の強化を少しずつ進めていこうと思う。老後のため。わはは。
これもほんとちょっとずつちょっとずつ、毎日チャリしたり、ジョギングしたりするしかない。
小さな声での身体との対話だ。
登坂中、やはり膝がぴりぴりと電気的な訴えを起こしたので、あとは立ち漕ぎせずに、ゆっくり登った。
物見山攻略
土曜日、梅雨の中晴れに恵まれ、朝から箱根チャリ登坂。
芦ノ湖の風が最高。
前から行ってみたかった大涌谷(おおわくだに)をチャリ登坂するも、小涌谷で挫折。
距離51km。合計登坂高度1100m。
膝の強化のため、そのままジョギングペースでランニングとスウィム。今日はなかなか心拍が下がらず、スウィムは1.5kmでやめ。
ランは5km地点まで快調だったが、その後、右膝が痛みだす。大島トライアスロンと同じパターン。
復路の残り5kmは挫折してバスで帰ろうかと思ったが、8月に開催されるハーフトライアスロン(スウィム2.5km、チャリ100km、ラン23km)に申し込んだので、だましだまし歩きながらでも完走する練習。膝の痛みが激しく、最後は200m走るごとに歩いた。
日曜日は荒川で開催された実業団NKロケッツのチャリ走行会に出た。走行115キロ。
ピンクのユニホームのお披露目と、新メンバー2名のニューマシンのお披露目もあった。
本年のミッションであった「物見山」攻略も達成。
物見山は荒川サイクリングロードから少しはずれた場所にあり、トライアスリートや競輪選手が多数周回して練習していた。1周6kmで平均勾配4%。登坂高度は100メートル程度。確かにチャリのメッカらしいアウラがあった。

海開き! で、泳いだ
7月になった。
早朝、箱根チャリ登坂。
帰還後、ワイフと娘といっしょに酒匂川サイクリングロード往復。
雨が降ってきたので、1往復でやめて帰還。
今日は海開きだというので、家族で海へ。トライアスロンウェアーは、チャリもマラソンも水泳もすべて同じウェアーで済む。
本格的に泳ぐつもりで、ウェットスーツで家を出た。国道を水着で歩く三人。

数分で御幸が浜に着く。
雨まじりだったので人はまばらだったが、コースロープとブイが設置され、海の家もだいぶ完成に近づいていた。たいていの人は波打ちぎわで足を濡らしたり、傘をさして海を眺めている中、静寂を破って波に向かって突進する家族。

赤いのはブイではなく俺の頭。背景の漁船がいい味。
大島トライアスロンでは、入水の時、波に向かってダイブすることを学んだ。今日はその練習。傘をさして海を眺めていた親子づれやカップルがびっくりして指をさす。
海で泳ぐのは2回目。波が強く思うように進まない。3周し、浜辺にダッシュで上がり、そのままランニングの練習。大島では、出水後、だらだら歩いている姿がカッコ悪いと家族の批判を浴びたので、今日はちゃんとカッコよく走る練習。

でもやっぱり歩いているように見えるな。
嵐の海! で、泳いだ
梅雨明けはまだかと空を見あげる日曜早朝。
お、雨が降っていない。
チャリで箱根へ。
前日は国道一号最高標高地点の看板前で記念撮影しようとしたら、携帯のカメラが電池切れ。本日、フル充電でのぞんだ箱根だったが、箱根湯元を過ぎたあたりで暴風雨に遭遇。Uターンし、強風に乗って時速60キロで逃げる。けっきょく湯元で撮影した標高94メートルの記念写真となった。トライアスロン専用チャリの納車記念。
帰路6キロは口から泡とヨダレを流しながら、時速45~55キロでクルマを追い越しながら帰った。今回のチャリはただのチャリではない。逆立ちしそうなウルトラ前傾ポジションで、風を切り裂く。その名も、猿兵衛呂(さるべろ)。
「すごい雨が来るぞー」
と家族に言ったが、薄日がさしているぐらいで、信じてもらえない。
娘は、海に行く、と言ってきかない。
まあ海なら雨でもいいかと準備をしていると、暴風雨になった。
午前10時、雨があがったので、海に行く。
天気は不穏で、間欠的に激しい雨が降った。波も高く、ときおり巻き波が白い飛沫をあげている。もちろん、誰もいない。
砂浜を駆けた。大波にむかってダイブ。引き波に吸い込まれ、入水成功。
水が濁っている。恐怖心。
短いピッチで波濤が寄せてくる。恐怖心。
ブイとロープで区切られている一番奥まで泳ぐと、深い場所のはずが、なぜかちらっと水底に岩がせりあがっているのが見えた。背筋がぞっとした。
海は怖い。10周約2000メートル泳ぐつもりが、疲れというより恐怖心で3周で挫折。スウィムアップ。
波打ち際で娘と立っていたら、大波で娘をさらわれそうになった。必死でキャッチ。
海は怖い。
風雨もきつくなってきた。監視員の黄色いサーフボードが風にあおられて、宙を舞う。追う監視員。無人の砂浜。
雷が来たら海上は危険だし、浜辺を退散。
「おとーさん、今日は流されてたよ」
と、ワイフが言っていた。
「泳いでたら、浜を全力で走っている女が見えた」
ワイフは浜辺を3往復、全力疾走のインターバルをやっていたらしい。
雨は降ったり止んだりだったが、家にもどってすぐ、俺はランニング、ワイフと娘はチャリで酒匂川サイクリング公園に出撃。途中、カレー屋で飯を食ったり、電気屋でテレビを見たりして、驟雨をやりすごしながら前進。
サイクリング公園はやはり無人。1周回1.6キロ。ワイフもここからはランニング。
今日は買ったばかりのマラソン雑誌の記事にあった「LSD」なるものをやってみた。
LSD。ロング・スロー・ディスタンス。
ゆっくりどこまでも走ろうと試みることで、10キロ走ると自分の体はここが痛くなる、20キロ走るとここが壊れる、とか、そういった肉体との対話を通じて、距離に対する経験を積み、同時にエアロビックな肉体の基礎をつくるというトレーニング法らしい。
5キロを過ぎた。ふつうなら右膝が痛くなってくるころだが、キロ7分弱のゆっくりペースなら膝も痛くならないことが判明。これはいける。
10キロを過ぎた。膝はだいじょうぶ。くるぶしにチョイ危険信号。
14キロ過ぎ。まったく想定外の左の足小指がクツズレ。
この間、周回路を娘はチャリで10周。
サイクリング公園を後にし、クツズレの痛みが限界で、いったん酒匂川河口の浜辺で休憩。本番ではテーピングを持っていった方がいいと勉強になった。
ここの浜辺はビーチとしては、うちの近所の御幸が浜海水浴場よりはるかに格上なのに、海水浴場ではない。以前、サーファー暦の長い人に聞いたことがあったが、酒匂川河口のビーチは波が強くて、台風のときなどは有名なサーファーが乗りに来るそうだ。今日は荒れ模様の天気で、確かにすごい巻き波ができていた。
休憩をはさんでからは、体の調子も落ちず、合計2時間余で20キロを走った。(休憩時間をのぞく)
クツズレ対策さえすれば、もうちょっといけそうな感じだったが、家まで残り1キロほどの地点で、チャリに乗っている娘がランニングしたいと言いだした。ワイフもランニングしたいと言って、ジャンケンをしている。おかしな家族だ。
交替で娘のチャリとワイフのチャリを俺が乗る。ふたりとも、いいペースでランニングしている。
「なんかここにきて、調子がでてきた」
と、目が燃えているワイフ。
夜にまた走ろうという話になったが、飲み屋で飲んで帰ったあとは、布団もひかず、ばったり眠り込んでしまった。娘なんか、フローリングの上にじかに寝ている。やっぱり奇特な一家だ。
クルマ使わずグルコサミン
梅雨がつづいている。
何かとクルマでの外出が多くなるはずの時節だが、実際にはめっきりクルマを使わなくなっている。
というのも、ランニングをはじめてから、雨を好ましいと思うようになったことが大きい。ランニングなら、雨が気にならないどころか、この季節、炎天と比べれば雨ぐらいの方がはるかに心地よい。ズブ濡れで走っていると、クルマですれ違う人たちが、眩しげにリスペクトの眼差しを振り向ける。雨が自分を浄化しているような感覚。これがまた心地よい。
そういうわけで、最近は、買い物に行くにも、郵便局にも、スポーツクラブに行くにも、ほとんどランニングである。
大島トライアスロンが終わってから1ヶ月、月間450キロを踏み、ランニングビギナーから、いっきにランニング初級者へのカテゴリーアップを狙っている。
雑誌から得た俺の大雑把なイメージでは、月間500キロ以上で中級者、月間700キロ以上で上級、月間900キロ以上で実業団。
といっても、大島トライアスロンでは、右膝の故障に悩まされた。健康食品にも強い会社に勤務するワイフに相談すると、グルコサミンを勧められた。
一ヶ月飲んだ段階で完全な勝利宣言とまではいかないが、今、毎日ふつうに走れるのは奇跡のようで、ほんとうにうれしい。
クルマを使わず雨走り。
快適なハード・ロハス生活を支える、エイボン「グルコサミン スーパーDX」
箱根ダブル登坂
早朝、箱根チャリ登坂。
前夜遅くまでかけてトライアスロン用チャリを実戦用に仕上げたので、その試走を兼ねる。
サドルの角度を何度も調整し、決勝用リヤホイール、サドルバック装着型ボトルケージ、エアボンベを装着。しかたがないが、かなり重いチャリになってしまった。
ハンドル位置も10mm下げ、逆にDHバーの位置を10mmアップ。リヤのスプロケを12-23から12-25に変更。能登半島の珠洲トライアスロンのハードな山岳コースに照準をあてた。
いつもの箱根旧道を登坂する自信がなかったので、イージーな箱根駅伝コースで登るが、つらかった。これまで愛用していたオルベア・オルカは、スペインのバスク地方の山岳を登坂するように設計されたチャリ。峻険な旧道ルートでもぐいぐい登る感じがあったが、サーベロP3カーボンというトライアスロン用チャリは、フレームが固く、踏んだ分だけキッチリ、ビタ一文まけねーぜ、という感じで、オルベアのようなイタワリがない。そもそも平地を速く走るためのチャリだから、しかたないが。
標高700mを越えたあたりから濃い霧も出てきて、だんだん登るのがイヤになってきた。
どうにか国道1号最高点874m到達。

オルベアだったら、ものたりない駅伝ルートが、こんなにハードとはね。とほほ。
しかし、下りは速い。もうチビりそうなぐらい速い。
家に帰還すると、すでにばっちりチャリに乗る準備をして待ちかまえていたワイフと娘。
どこに行きたいか訊くと、箱根。とほほ。
ふたりはチャリ、俺はランニングで、再度、箱根アタック開始。
彼女らにとって新記録の大平台駅まで登坂。
下山後、漁港の観光市場に寄って昼飯。滝の汗。生ビールが五臓六腑にしみわたる。あたりまえだ。
帰還後、間髪置かず、娘がせきたてる。
「みんな、海に行くよー!」
小田原に来てから、娘は無類の海好き少女である。ウェットスーツを着て、御幸が浜海水浴場へ歩いて行った。
お、今日は海水浴客が多い。ギャラリーが多いと馬鹿もやりがいがある。10周! と意気込んで波にダイブしたが、首が痛くて4周でダウン。コースロープとブイのレイアウトがなんか先週と変わっていて、実質1200mぐらいだろうか。
ウェットスーツで首がこすれて、塩水でひりひりする。トライアスロンのロングをやる人は、多くが首筋にケロイドのような傷を負っているが、ウェットスーツで擦れるためだと言っていた。そんな馬鹿な、と思ったが、これは真剣に対策を考えないといけない。痛いの、つらいの、だいっきらい。だめ人間だもの。
夕食後、ワイフが真顔で走りに行かない? と言いだした。
ほんとですか。娘はチャリ、ワイフと俺はランニングで、やむなく6キロ走った。ところが家の前で、ついカッコつけて、
「おれぁ、もうチョイ走ってくらあ」
と言ってしまった。ほんとは、ちょっと先の販売機に煙草を買いに行くだけのつもりだったのだが、
「うわー、おとーさん、カッコいい!」と黄色い歓声。
気をよくして、つい、
「ま、もう一周ってとこかな」
って、うらぁ何言ってんだ、おめー。
箱根と合わせて、けっきょく18キロ。このへんがどうやら俺の限界らしく、最後はひょれひょれ。
8月のハーフトライアスロンのランは23キロ。正直、完走が危ぶまれるが、どっちにしてもやれることしかやれないので、やれることをやってみよう。あと1ヶ月。
ふとんのない生活
ふとんを廃止しての寝袋(シュラフ)生活を提案し、ワイフの猛反対で廃案になったのが、およそ一年前。
はからずも、これから約1ヶ月間、シュラフ生活が実現されることになった。
大島トライアスロンのあとの高熱での解毒作用で流出した毒汗が、ふとんを汚染。ワイフのよだれ、娘の鼻血・・すでに危機的状態にあったわが家のふとんは、梅雨の湿気とありまって、悪夢のようなふとんと化していた。ふとんというより、腐海。実際、裏返すと菌糸が生えている。たたけば胞子が飛ぶ。悪夢だ。
だいたい、シュラフ生活に反対したわりには、ワイフと娘は、どこでも平然と寝る。じつは神経質なのは俺だけである。
平然と汚染ふとんで寝入っている妻子を見て、俺は、もうこれ以上堪えられない、と翌朝宣言。
そのままクリーニング屋に全部ふとんを出してしまったわけである。長くても1週間ぐらいかと思っていたら、1ヶ月かかると後で知った。
土曜日。スノーピーク社製のテントが届いたので、部屋の中に設営。わが家は、ふとんが戻るまでの当分のあいだ、このテントに寝泊りすることになる。
第一夜、いちおう娘は大喜びであった。
回復期をはさんで強くなる
もうまる一日からだが動かなかった。
5万メートルのインターバルスウィム、450キロのランニング、週2回程度の箱根登坂・・大島トライアスロンのダメージが回復してからの一ヶ月は、以前より強度の高い鍛練に肉体を投げこむことができるようになった。明らかにサナギマンから抜け出た感のある一ヶ月であった。
しかしサプリメント漬けで、無理矢理絞り出しているような違和感もあるし、脳みそは考えない脳、100%小脳状態で、ラミダス原人程度まで退行している。
体重は2~3kg落ちた。体脂肪は20%前後から15%台に。本腰を入れはじめたばかりのランニングの効果(負荷)は大きいようだ。
そしていっきに揺り戻し。体がぜんぜん動かなくなった。目が覚めると、起き上がれない。アキレス腱が固着して、ロボトみたいである。あきらめて、ひさびさに脳だけを使った一日を過ごす。使い慣れていないので、脳がけっこう酸素を消費しているのが分かる。処理能力はひどいが、集中持続力は悪くない。エイプマン脳。
翌日、いきなり肉体完全リカバリー。すごい。どんどんいけそうで怖い。
実業団鉄人部NKロケッツ主将が言っていた。
「トライアスリートは、回復期をはさんで強くなる」
週末は八尾トライアスロン(富山県)遠征があるので、この1週間は調整にあてる。長めの回復期でもある。軽めに体を動かすだけにするつもりだが、体が勝手に踊りだして危険である。
箱根は控え、オルベアORCA号で手近な石垣山登坂。2往復は軽くアップし、3往復目でアタック。昨年10月以来だせなくなっていた悲願の9分切りを大きく上回って8分43秒。足がエンジンのようだ。悩みだった膝もグルコサミン効果で頑強。
トライアスロンウェアーなので、そのままランニングで片道6キロのスポーツクラブへ。プールでは、ちょうど、顔なじみになったアスリートおじいちゃんたちが100m×10本のインターバルをやるところだった。おいでおいでをされて、仲間に入った。動く。体が動く。
調子に乗らず、プールはインターバルをもって終わりにした。
帰路のランニングは小雨で心地よい。ちょっと遠回りして、小川沿いの土道で魚をのぞきこみながら走ったり、土手にクレソンを見つけて喜んだり。八百屋の前では、買い物客のおばちゃんが、買ったばかりのホオズキをうれしそうに抱えていた。
少しずつだけど、ランニングがおもしろくなってきた。チャリよりも速度がゆっくりなぶん、いろんなものが見える。
三ヶ月前、イトーヨーカドーで買ったシューズの先に目を落とす。水しぶきを飛ばし軽やかに前後するシューズの先端に、ゴマつぶみたいな小さな文字で「RUN LONG」とある。
RUN LONG。
この小さな文字、なんか好きだ。
ヨーカドーで、もう一足同じのを買ってしまった。
RUN LONG。
そしたら居酒屋の前で見かけたおばあちゃんが、同じシューズを履いていた。
ちょっと拍子抜けしたけど、おばあちゃんだって、
RUN LONG。
ついに俺も大ぢぬし
チャリに乗ると、股が痛い。
ここ2週間ぐらいか。痛い部位は陰嚢接合部と尻と右太ももの境界線上。
これら3つが国ならば、領土紛争が耐えず、陰嚢が主権を主張すれば、尻は歴史問題を持ちだして反論、右太ももは同盟国の左太ももと右ふくらはぎの承認を得て、自国の領土としての既成事実づくりに懸命。
そんな、股の火薬庫とでもいうべき微妙な場所に、血行不良が原因の鬱血が悪化した血瘤ができた。
ぷくっとふくれた血瘤は、まさに絶海の孤島である。が、俺はこれに対して目をつぶりたいし、領有権を主張したくもない。
早やかにこの島が三国境界から消えてくれることを望むのみで、つまり、まことに遺憾なのである。
もしこれが両足にできでもしたら、俺のチャリ人生は終わりだぁと嘆きつつ、それでも右に腰をずらしたおかしなかっこうでチャリに乗りつづけた。
さかだちしそうな新鋭機の過激なポジション(※写真)に対して、何年も使いまわした旧型のサドルを組み合わせたのが悪かったようだ。サドルを世界初の座面マグネシウムの癒し系アナトミックに換装してからは、ミネラル効果かマイナスイオン効果か、いやただ形状がよくなっただけだと思うが、みごと痛みはやわらいだ。しかし血瘤は残っている。すぐにでも再発準備ができている状態。まさに股の火薬庫。
膝の問題が解消され、無理がきくようになったのが一因だ。どこかがよくなれば、どこかに負担がくる。人間の体はじつにおもしろい、などと感心している場合ではなくて、人間万事塞翁が馬の悪い方にスパイラルしている現況を脱さねばならない。
しかし微妙な位置だけに、どの病院に行けばいいのか?
皮膚科? 肛門科? 泌尿器科?
またもや主権問題である。太ももは皮膚科を支持し、尻は肛門科、陰嚢は泌尿器科。
悩みあぐねワイフに相談すると、
「ぷふっ」
ぷふっ、って、それなんだ? それで終わりか。
しかし夜が更け、妻子も寝静まり、おのずと解決した。
尻の穴に不思議な異物感。風呂に入って触ると気持ちE・・じゃなくて、さらにでかい島が尻の穴の外縁部にあった。
おおぉ、平成新山出現。またもや領土問題か? いや領土問題はもういい。
風呂から上がり、インターネットの検索をかける。
「尻」「血瘤」
「肛門」「血瘤」
出てきた結果は明確だった。
いぼぢ。
イボヂ。
異母児じゃなくて、疣痔!
ああああ~、これが、学級崩壊の小学生もビビる、あの有名なイ・ボ・ヂ・かーーー!!!
「漢方で治す疣痔」というサイトを見つけた。
いいぞ。
<遠く戦国時代、騎馬武者に多かった疣痔・・>という書きだし。
いいぞ、まさに俺だ。
<騎馬武者たちのために処方された漢方薬。>
これです、これ!
<しかし現代においては、当時の騎馬武者とは胃腸などの頑健さが異なるため、現代風に調合をアレンジ。>
余計なことすなー。騎馬武者のハードなやつをくれ~、と、わめきつつ胃腸虚弱な俺。
有効な対策を講じるため、大脳前頭葉の召集した体内全体会において早朝まで熱い協議はつづけられたが、小脳勢力のぎりぎりまでの抵抗を押し切って、7月12日水曜日・・スウィム、ラン、バイクのすべての運行中止を決定。特効薬は翌日、届く予定。
またもやデスクワークに没頭した一日となった。しかしふつうは、こうやって座りっぱなしなのが痔になるんじゃないか?
しかしこれも大自然の神秘というもの、ダブルの痔持ち、大ぢぬしとなった今、ぢたばたしてもしかたない。というより、痛くて、ぢたばたできないし。
夕方、週末の八尾トライアスロン(富山県)の参加証が郵便で届いた。
俺はちょっと汗をかいて、ぢっと封筒を見つめた。
時間との戦い。
最悪の場合、尻の穴にテーピングを処して走るという、ぢつに悲愴な姿を想像しないわけにはいかなかった。
ハスの茎で初動作戦
前日、いぼぢキャリアであることをカミングアウトした俺ですが、ラン・スウィム・チャリの運行全面停止決議を破って、やってしまいました。
深夜にガマンできず、5kmのランニング・ダッシュ。なかなかいいタイムが出た。
しかし、おかしい。
俺の計算では、最大心拍で押し出された血液の奔流によって、肛門末端部の血管にも新鮮な血が行き渡り、ダッシュの足の動きによる激しい臀部の律動がマッサージ効果をもたらし、みごと、いぼぢ縮小っっ!・・のシナリオのはずが、実際は反対に巨大化。正確に言えば、悪化というのでしょう。
今まで痛くなかったのに、椅子にすわるだけで痛くなってきた。
早朝に、チャリ石垣山登坂。2往復。最後ダッシュ。
昼にランニング12キロと、スウィム150m×8本ダッシュ。
痔になると、なぜダッシュをしたくなるのか。
おそらくどこか後ろめたさがあり、短い時間で終わらせようとする心理が働いているものと思われます。
気合療法はあいかわらず失敗の連続なので、本日からハスの茎を主成分とした痔の特効薬を投入予定。
痔の薬といっても、けっきょくは血行をよくする成分。ほんとに効くのだろうか。
ハスはハスでも、高知県のある地域に自生する天然のハスでなければ効かないらしい。
そんな摩訶不思議なハスの茎だけに、なんだかわくわくしないでもない。
次回は、土砂降りの中でのトライアスロン大会。

