トレンクル

トレンクル

時速300キロで新幹線輪行遠征。
疾風のごとく目的地に着くと、この超小型ロケットが射出され、ぽてぽてと走ります。

JR東日本とパナソニックが1988年に共同開発した「輪行のための」折畳み自転車トレンクル。
駅のロッカーに入るサイズながら、チタンフレームにチタンフォークを装備し、車重はわずか6.5kg。

このトレンクルを18段変速化、ナビゲーションシステムを装備して、知らぬ町を探索しております。

1、超軽量折りたたみ自転車「トレンクル」
  購入から、18段変速化まで

新幹線搭載型! 戦略的弾道ちびミサイルだ!

トレンクルの絵 ひとつ。道で出会う人々に勇気を与える。

 ひとつ。家庭の子女とのペースのギャップを埋める。

 ひとつ。家事育児のあいまでも、遠くの見知らぬ地をサイクリングしたい。

 2006年冬のこんな脳内ニーズ(別の名を妄想ともいう)から白羽の矢が当たったのが、パナソニック社が1998年にJR東日本と共同開発したトレンクルである。

●トレンクル詳細情報(パナソニックHP)
 http://www.panabyc.co.jp/products/html/peht2.htm

JR東日本との提携でうまれた自転車

 JR東日本とパナソニックが1998年に共同開発した輪行(※電車と自転車を組み合わせた旅のスタイルのこと)のためのスペシャル自転車。発売から基本設計を変えず細かなリファインのみで現在でも輪行ファンの根強い指示を得ており、その完成度の高さから類似の自転車も各社から売りだされた。

 折りたためばJR駅のロッカーにも入る超コンパクト設計。専用輪行バッグを使えば手荷物料金なしで新幹線も在来線にも乗れるし、ラッシュ時間帯をのぞけば、それほど迷惑にもならなさそうな大きさがうれしい。

軽くなければ、現実的な輪行は難しい

ガープ フォールディングバイク(折りたたみ自転車)ではクワハラ社製GAAPツアーを所有していたことがあるが、装備重量15kgでは現実的には気軽に電車に持ち込もうという気にはならない。折りたたんだときのサイズも人の邪魔にならない程度でなければ、早朝ぐらいしかチャンスはない。走行性能は抜群だが、走行性能を重視しすぎて、折りたたみによる機動性を犠牲にしたかっこうである。

 そこで、とにかく走行性能よりも機動性を重視した自転車を試してみたくなった。とにかく経験してみないと自転車は分からない。

 荷物を持ち、自転車を持ち、気軽に電車で旅行しようという場合、感覚的には自転車の重さは備品を含めて(装備重量)9kg以内にはおさめたい。この時点で、たいはんのフォールディングバイクは候補から脱落する。

世界最軽量の6.5kgはチタンのフレームで実現

 フレームとフォークはチタン製で、車重は6.5kg。

 高価ではあるが、エンスージアスティクなオーナーが多く、その分、カスタマイズ等についての情報やパーツも充実していて、拡張性が高そうだ。オートバイでいうところの「モンキー」シリーズと似ている。モンキーも、あの小さなオートバイに100万以上お金をかけるエンスーはザラである。
 トレンクルの世界も、エンスーの世界はけっこうコワそうである。

それでも、やっぱり笑いはハズせない

和田サイクル 豆チャリでも、そこは日常プチ革命家、やっぱり街角で「笑い」をとりたいものである。これまで無駄に鍛えてきた筋骨を、この豆チャリに注ぎ込むのだ。

そこで今回は、折りたたみ自転車、そしてトレンクルの改造技術で全国的に名高い「和田サイクル」に二度、足を運び、トレンクル多段化について相談した。

 純正のトレンクルはてくてく歩く感覚プラスアルファぐらいのコンセプトで設計されているので、変速機はない。女性でも軽くこげる反面、スピードはでない。

 ここに目をつけた歴代のエンスーたちの手によって、多段化と高速化への道が地道に開発され、ありがたいことに2006年現在では、和田サイクルに依頼すれば最初からスーパー豆チャリたるトレンクルを完成車状態で手に入れることができる。

デュラエースにカプレオで18段化

 ロードレース機材最高峰のDURAACE(デュラエース)のダブルギヤ・クランクに、カプレオ9段カセットスプロケットを組み合わせ、じつに18段。(実際には内側の1枚は干渉して使えないので、16段)
 ちゃんと手もとのレバーで確実なギヤ操作が可能。

 高速化に合わせて、ブレーキもダブルアームの強力なタイプに換装。ノーマルブレーキのままだと、制動力がプアすぎて死にそうになるらしく、ギヤ多段化とブレーキ換装はセットで行なうのがのぞましい。

折りたたみ機能はガタつきとの戦い

 折りたたみ自転車は接合部がガタつくイメージが強かった。以前に乗っていた豆チャリGEKKOはけっして安い自転車ではなかったが、ハンドル部などのガタつきが不快であった。

 剛性を重視したGAAPなどは、じつにカチっとしていて、走行中にフォールディングバイクであることを感じさせない。(前後サスペンションに前後ディスクブレーキが装備されている) そのかわり重量と容積を犠牲にし、折りたたみ機構はあくまで「おまけ」レベルのものになっている。

 トレンクルはとにかく軽量、かつ折りたたみ性能を重視したモデルだけに、ガタつきは覚悟していたが、乗ってみて驚いた。ガタがない。接合部をしっかり設計してある。これはすごく感心した。

小径ホイールの不安定さは?

 トレンクルは14インチのホイールである。これはスパゲティを盛るお皿ぐらいの大きさをイメージしてもらえればぴったりだ。さぞかしフラつくだろうと思いきや、実際に乗りだしてみると想像していたほどではなかった。ホイールベースやキャスター角といった各部のディメンションがよく練りこまれているのだろう。

多段化カスタムに落とし穴はないか?

ALHONGA社製のダブルアーチの前後ブレーキ 和田サイクルによる多段化カスタムの仕上がりの確実さにも驚かされた。
  スムーズで確実なギヤチェンジが可能。まるで純正品のような完成度だ。
  折りたたみ時にも邪魔にならないようにワイヤー類はうまく取りまとめられている。
  ALHONGA社製のダブルアーチの前後ブレーキは高速域、下り坂でもじゅうぶんな制動を確保している。純正レバーだと握りごこちがふにゃっとしていてもったいない。剛性の高いレバーに換装したいところ。

サドルは交換

 セライタリア社製のフライト・チタンという軽量快適なサドルが純正で装備されているが、尻がすべって乗りにくかったのと、穴あきタイプのサドルに慣れていることもあったので、同じセライタリア社のフライトシリーズで女性用のフライト・ゲルフロウ・レディに替えた。

 トレンクルはポジションの自由度が確保されていないので、前後長の短かいレディス用サドルでも運転上、問題ない。むしろ尻に全体重がかかるポジションだから、レディスでちょうどいいぐらいかもしれない。女性用サドルによって小径のトレンクルがいっそうかわいらしい印象になった。

乗りごこちヨシ、ただし高速コーナーはコワイ

 通常走行で時速20キロから30キロ。条件が悪くなければ30キロ程度で巡航が可能。
  意外だったのは、段差やギャップに対してのショック吸収性のよさ。車体が全体でしなるような感じで乗り心地がとてもよい。けっして不快なしなりではない。しかしさすがに、立ち漕ぎに耐えるほどの剛性はない。また、高速でコーナリングすると剛性上の理由でけっこう怖かった。

実走テスト1 路線バスと対決

 小田原~ダイナシティ間の路線バスと抜きつ抜かれつして5.5キロの試走をした際、平均時速27キロ、最高速度44キロをメータが記録していた。完全に想像以上の結果である。

 歩行者やドライバーの表情をみるに、そうとうのアウラのようである。90キロで走行するロードレーサーと同等の衝撃波をもつと推定する。が、ロードレーサーのように眉をひそめられることもなかった。やはり笑いを誘うのであろう。

路線バスと戦う馬鹿男

今後のテスト項目

春の本格的な弾道ツアー前にいくつかのテストをこなしておかなければならない。以下に目録を示す。

  • 折りたたみ収納の練習と洗練
  • 新幹線を使った輪行テスト
  • 同、都内移動レポート 28km
  • バンク修理対策および練習
  • 輪行バッグの洗練
  • 輪行旅行の持ち物のブラッシュアップ

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著者紹介

市原千尋画像

市原 千尋
Chihiro Ichihara

1970年香川県生れ。文学ゆかりの町、小田原に移住して3年目。趣味はフライフィッシングとオートバイク。芥川賞を本気でめざすが執筆ははかどらず、このところアイロンがけ(エキストリーム・アイロニング)に興味を持ちはじめた37歳。