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序、4月13日(日)前哨戦
この日、24歳の私はめでたくも結婚する。
めでたく、といわず、めでたくも、といったのにはもちろん訳がある。
式場内の二次会の宴、上下ジャージネクタイ軍団に囲まれ、たてつづけに16杯のビールをイッキした新郎はトイレに行ったきり人事不省に陥った。
館内全体のアナウンスで夫の名前が告げられ、クルマ椅子に乗せられて会場に帰ってきたときにはぐにゃぐにゃになって、何度もクルマ椅子から転げ落ちる有様。落ちる度に、こらー、俺は精密機械やどー、落とすにゃー、と怒鳴る上半身肌脱ぎの大虎。
この日、椿山荘では20組以上の男女が結婚の約を結んでいたが、ロビーを抜け大廊下を闊歩し、クルマ椅子から何度も転げ落ちながら大声で阪神タイガースの歌をうたう男が、他の新婚さんおよび関係者の顰蹙を買っていたのは間違いない。しかし恐ろしいことに、その顰蹙男もまたその20組の新婚さんの一人なのだ。そして私はその男の新婦という名誉ある役どころにある。ただ恥かしいの一言である。
クルマ椅子を左から押すのは新郎の弟。そして右側はクリスチャン。新郎がクルマ椅子から落ちぬよう全身を呈して支えているのが中学以来の親友。献身的な介護にもかかわらず、やっぱりクルマ椅子から落ちる夫に、かわいそうに何度も叱られている。
式場とホテルをつなぐ渡り廊下の途中で、式場の人が担架をもってきた。
「こりゃええでえー」
蒼白な顔面に笑みが満ちたかと思うと、夫はそのまま静かになった。
そして私は憧れのフォーシーズンズのルームサービスのオムレツをむしゃむしゃ食べている。一皿五千円のオムレツ。いい気味だ。
大いびきとともにマットに沈んでいる男を見たら、なぜかジングルベルを歌いたくなって歌った。今日は楽しいクリスマス、ヘイッ。

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