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いざ海賊の島へ

■倉敷でネズミ捕り
 

 朝5時起床。
 昨晩の高知行きのフェリーをのがしてしまったわたしたちは、とりあえず西にすすむことにした。どこからか四国に上陸すればいいわけで、瀬戸内海航路は数もたくさんある。
 岡山のICで山陽道を降り、下道で倉敷に入るが、だだっ広い田圃の中の4車線の道、なぜか新郎は今にも止まりそうな速度でたらたら走っている。
 追い越し車線から黒い大阪ナンバーの乗用車がわたしたちを40キロ近い速度差で抜いていく。と、ほとんど同じタイミング、前方で3人の青服が旗を振りながら飛び出してきた。
 黒車は追い越し車線のまま、斜めに停車。
 青服が取り囲む。
 左側に2機の白バイ。
 まもなく黒車は空き地に引き込まれていった。道路を封鎖していた白バイ隊員が新郎に敬礼して道を開ける。新郎も受けて律義に敬礼している。
 本日、交通安全週間最終日。くわばらくわばら。


◆いざ、海賊の島へ

 わたしは結婚して「市原」という姓になったわけだが、新郎はいつも瀬戸内の「市原水軍」という弱小海賊の血筋だと得意気に言っている。
 瀬戸内には「市原」ばかりが昔から住んでいる小さな島があるらしい。市原水軍の根城であったこの島は、現在岡山県笠岡市北木島。地図を見ると一つの町ほどの面積で、道は島を半周する一本しかない。地図上ではフェリー航路も出ているが、一日に一往復なのか、もう少し出ているのか、何の情報もない。まあ、行ったら行っただ。
 わたしも海賊一家の一員になったのだから。
 国道2号を西走して、北木島行きの船が出ている笠岡に着いたのが午前10時。さて港をさがさなきゃと思っていたら、国道沿いに小型のフェリーが見える。新郎がガッツポーズしながら、
「海賊の島が呼んでいる」
 見ると、船には確かに「笠岡-北木島」の文字。道路にむかって船の乗り込み口が大きく開かれている。確かに迎えられているようだ。しかし、港湾事務所もなければ、待合いもない。これって、このまんま乗っちゃっていいわけ?
 目についた雑貨屋に入り、店の人にたずねると、
「あれえ、おかしいなあ。10時半の便があったでえ」
 時計を見ると10時31分。
「この船は?」
「これが出んのは午後じゃけの」
 店の人はそう言いながら表をぐるりと見渡すと、
「あー、あれあれ。今、来よるオレンジ色の船じゃわ」
 見ると、すごいスピードで港に近づいてくる全身錆だらけの船。なにそれー! 分けも分からないままにとりあえず走る。
 あっち側の港に辿り着くと、ちょうど船も着岸しようとしていたところで、何とハッチを開きながら岸壁に着くや、中から軽トラックが2台飛び出して去っていった。
 入れ替わり別の軽自動車がバックで船に乗りこむ。チケットもないけど、とりあえずわたしらだって、うかうかしておれない雰囲気。
 ままよと乗り込む。

 

 中に入るや、ういんういんいいながら、もう後ろのハッチが閉まりはじめているし、よく見たら周りの景色がぐるりと転回している。船はもう出航しているのだ。もうほとんどレイダースの乗り。
 船は定員50人、キャビンの中では地元の人ばかり10人ほどがもううつらうつらしている。何十年も海風にさらされてきたらしい荒く硬い肌をした人たちだ。ほんと、山田洋二の映画に飛び込んだような錯覚を覚えずにいられない。しばらくすると、ハッチの開閉をやっていた人が料金を集めにまわってきた。
 うーん、旅情。
 小一時間で北木島豊浦港に着いた。

 

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