|
最後列からイッキにリーダーの位置にとって替わり、ブロック野郎の30センチ後ろから、ナインアールの片目プロジェクターのハイビームをたっぷりと注ぎ込む。
ざざっ、集団が車間をあけた。
このクルマ、バイクなんかになめられてたまるかとばかりにテコでも譲ろうとしない。こっちも今回のツーリングばかりは譲るわけにはいかないのだ。ストレートの加速で横に並ぶ。コーナーが目前にせまってくる。下りのウェット、ぎりぎりまでツッこむが、こいつも譲らず並んだままだ。
ツッこみは相手の方が上で、引きさがる。立ちあがりでまた横に並ぶ。5度くりかえし、6度目のストレートで抜いた。
しかしコーナーのアプローチごとに猛然とケツを追いまわされる羽目に。バックミラーを見る余裕もないが、2つのライトが牙を剥いている。
こちらは立ちあがりごとに少しでもアドバンテージを稼ぐべく、やっきになってアクセルを開ける。
立ち上がりのたびに排気音が唐突に2オクターブ上がる。ハイドロプレーンで空転したままのリヤタイヤが、水面をはう蛇のようにうねりながらストレートを伸びていく。
「乗れとるわ……」
雨足がますます強まるなか、一人自虐的な喜びに浸る。しかしあいもかわらず、ツッこみごとにケツをなめまわされているのだが。
十勝平野までくだったところで四輪は脇道に曲がっていった。雨はますます土砂降り。コンビニで1時間ほど雨宿りし、R274、日勝国道を西走。うわさどおり交通量は多い。雨の中、何十台とバスを抜く。日勝峠、夕張を抜け、そのまま札幌へ。雨はやまず、さすがに疲労困憊。札幌市内で健康センターを見つけ、そのままくたばる。
<本日の走行・470km>
◆5000km断念…挫折
あまりの苦痛だ。
北海道に上陸してから、雨のせいで一日あたりのノルマを十分にこなせていない。700kmは走らないと予定の日数以内に達成できないというのに。
ひたすら帰ることばかり考えている。この日、早くも目標断念を決意。根性の無さは折り紙がフルカラーでついている自分だ。
リタイアを決めたら急に浮き浮きでもないが、札幌市からR230で中山峠を経て、羊蹄山を左手に見ながらR276、倶知安から道道で五色温泉を通過。ここから日本海側に抜ける道道66号では霧もさわやかに晴れあがり、素晴しい高原ワインディングを満喫できた。あとはグルリと海沿いを走っていく単純なプラン。
熊石町ではちょっとルートからはずれて雲石スカイラインを走るが、ちょっと山側に入ると雨。そこでまた地元のクラウンと競り合いになる……何で雨のときばかりに……最後の最後になって負けるわけにはいかない。これまでのすべての馬鹿が無駄になってしまう。またも涙をちょぎらせながらアクセルを開ける。完全にクソ意地である。
こうして根性無しながら辛うじて無敗だけは守りきる。海沿いをグルリとまわって函館に到着したのは夕方。
函館駅裏のお馴染み朝市で、気分だけはゴールをむかえたラリーストよろしく、ウニ丼、イクラ丼、イカ丼と有り金をはたいて食いまくる。おおっと、外に出るとスコールのような雨。
しかたなくまた店にもどり、ホタテ丼を食う。これで未練なく北海道を後にできるというものだ。
そのまま青森行きフェリーに乗り込み、北の大地、そして馬鹿かりしフリーターの自分に別れを告げる。
<本日の走行・530km>
◆7月2日、疲労ドラッグライダー走る
深夜、青森港到着。
あとは東北道を南下。白河で朝日を迎え、下道に降りる。行きつけの南福島のワインディングを走るが、どうもミスがつづく。どんなに疲れていてもバイクに乗りさえすれば直ってしまう自分だが、ここまで極度の疲労を経験したことはない。
バイクを降りると朦朧として歩きながら何度もマイクロ失神をくらう。まっすぐの道では走りながらでもぐうぐう、こりゃモノホンの白河夜船。危なくって仕方ないので最後の最後までワインディングを走りつなぎながら行く。
しめくくりは、筑波山。そして無事帰還。いつもながらキーを抜いた瞬間の安堵。空を見上げる。
はは、生きてる。
◆根性無しの反省会
5000kmを無敗で走破するという、まったく何の生産性も知性もないテーマを掲げての今回のツーリングだった。
毎朝5時に起き、飛ばせるだけ飛ばし、とにかく一つでも多くの峠を走ろうと、それだけを念じて思って走りつづけた。
何でそんな馬鹿らしいことをするのかと人からは冷笑を浴びるだけだが、動機は自分自身でも分からないのだから。
しかしそれでいいようにも思う。
26歳のフリーターであった自分が、少なくとも間違いなくそこにいて、はっきり生きていたと確信できる瞬間を自分自身の中に刻みつける一つの方法には違いないだろう。
はなはだ不器用な生き方ではあるけれども。

ツーリングデータ
☆全走行 4.090km ☆全費用
90.139円 ☆平均燃費 15.9km/? |
|