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国道244号は原生林の中の雄大なワイディングロードだが、ここでまた雨。
地元の大型RV車が水しぶきをあげて俺たちを抜いていった。退屈していた俺とオッサンは顔をみあわせ、アクセルオン。敵は巨体をゆすりながら150近いコーナーリングを決めている。まったくスキがない。少しタイトな右コーナーで対向車線側からぎりぎりのタイミングまでブレーキをがまんして、やっと前に出る。頭のなかでは実況の千年屋さん」の甲高い声が「おーっと、シュワンツのモーレツなつっこみ〜!」と叫んでいる。立ちあがりでメーターは振りきれ、さすがに敵はついてこない。バックミラーの奥ではひとつ前のコーナーでオッサンがクルマの横に並んでいるのが見えた。いったれ、燃えてる中年男!
路肩にとまったとき、
「あー、おもしれーじゃん!」
なんて強がっていると、オッサンは悲しそうな顔をして、自分のバイクを眺めている。
「どした?」
「スピードメーター、切れちゃった。」
「あらら。」
「前走ってくれる?」
「北海道はメーターいらないってことだよ。」
そういって慰めてはみるが、スピードメーターのみならず距離計まで動かないから、給油タイミングなんかまで分からなくなるのは困りものだ。まあ俺といっしょに走っている分には問題あるまいが。
雨は、そぼ降る。
斜里町のガソリンスタンドで雨宿りをかねてピットインしているあいだ、トバをだらーんと口からぶら下げて店員の女の子たちの動きを見まもるオッサン。ずっと気になっていたのだが、北海道の女ってみんな綺麗だよなあ。みじかいスカートできびきびと動く女の子たちを眺めていると、2台の不良スクーターが通り過ぎていった。
「あの高知のオッちゃんや。」
俺は急いでヘルメット、合羽、グローブを身につけ、スクランブル発進。オッサンは何ごとかとあわてながら、トバを口から落としてあたふたと俺の動きを追う。十五分ほど走ったところで2台に追いつき、オッサンはさらに5分ほどして後ろに追いついてきた。
「なんや。あんたらやったんか。」
ドライブインで止まったとき、高知のオッちゃんは合羽についた水滴を払いながらいった。
「後ろでドリドリ、ドリドリ、抜かイもせんし、なんやと思ったわいな。」
スーパートラップの入った大型2気筒エンジンの音を「ドリドリ」と表現するオッちゃんのセンスは秀逸である。ちなみにドカの場合は、同じ2気筒でも「デロデロ」なのだそうだ。さすがドカ屋さんと感心した。
オッちゃんたちと別れ、網走に向かう。網走の市街地に近づくと、国道244号線は片側2車線の広い道になる。またまたやる気満々のワーゲンゴルフと競り合っていると、俺のメーターが「ぴゅうん」と切れた。げげ。こっちまで壊れてしまった。
バイクをとめてオッサンに報告すると、二人で、うーん。この広い北海道、これからいったい何を頼りに走っていけばいいのだ?
日は少しずつ暮れはじめていた。
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