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襟裳岬から今度は東側の海岸沿いを北上する。この国道336号は黄金道路といって、建設するのに莫大な費用がかかったのがその名前の由来というが、惜しみなくトンネルを掘り抜いている贅沢三昧の道路を疾駆。雨足はますます強まり土砂降り状態で、上陸初日からなんとも過酷なツーリングだ。しかしおもしろいことに雨の日は晴れの日以上にコンセントレーションが高まる。路面状況で刻々と変化するグリップ力に対応するデリケートなブレーキング、水膜に浮く寸前のフロントタイヤの感覚、立ちあがりでスピンをはじめるリヤタイヤ……すべての挙動を究極までスムーズにしていくこと。ほとんど頭の中は雨の鈴鹿を制したマイケル・ドゥーハンのドキュメンタリービデオのBGMで席巻されている。
バックミラーに猛然たる勢いで迫ってくるパジェロ二台をきっかけにアクセルオン。
ゆるいコーナーになっているシェルター内で先行していたオッサンを一気に抜き去り、立ちあがりでぎりぎりまでアクセルを開ける。メーターの針がくんくんとのぼり、合羽を着込んでハングオンしていると、ストイックな修道僧の気分だ。
しかし俺は自虐を愛するオッサンの気性を少々甘くみすぎていたようだ。アクセル6分の1開度の気の緩みが、点にしたはずのオッサン機をいつのまにやら背後まで呼んでいた。そして半馬身の勢いの差で高速コーナーのインを刺された。
あららーと思う間もなく、オッサンの後ろにぴったりついてきた大型RV車が赤い舌をだして俺のテールをなめる。雨の高速コーナー。リミッターまで二十キロしか余裕がない。弱音を吐く間もない。死ぬ気で走りオッサンを抜く。だはは。今度はオッサンがRV車にいびられる番だ。
と、この抜きつ抜かれつのバトルは延々五十キロにわたってくりひろげられ、まこと、馬鹿まるだし。RV車をやりすごそうと、二股の道で脇道を選んで入った。道端でやっと休憩。かなり消耗している。地図を見るとおもしろそうな沼がある。戦士の休息。ホロヤカントウ沼をめざし、しばし国道を離れ、いくつかの林道をつないで走ると小さな温泉があった。

雨に濡れて冷えきった体をあたため、座敷食堂でカレーを食うと、気分は再び全開。
そのまま海岸沿いのダートを延々と走る。雨にもかかわらず、ヘルメットの中は二人とも笑みが充満しているのだった。
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