◆激烈! 司法試験ライダー
仕方がない、峠部門はあきらめ、急遽方針転換、街乗り部門で楽しむこととし、進路を大阪にとる。友人、有田は4時まで梅田駅の地下で勉強会をしているといっていた。
彼は司法官試験受験生であり、また27歳にしてNS50Fで激烈な走りをするかなりホットな人間である。彼といっしょに走るのも、今回のツーリングのひとつの楽しみなのだ。午後4時、勉強会を終えて地上にあがってきた彼を携帯電話を通してつかまえることに成功。
NS50Fは健在だった。有田は走りだすと、いきなり原付走行禁止の自動車専用道路へとあがっていく。100キロで流れる片側4車線の高速道路のような道を、オコジョのようにしなやかで熱い車線変更をくりかえしながら走り抜けていく。
「有田は健在なり!」
彼は半年前、取締りにあい、罰金6万円を納めている。どうも懲りていないらしい。
法曹会の人間は、何があっても法律に抵触するわけにはいかない事情でクルマさえ自分では運転しないというのに、この男ときたら、
「要するに、原付だと速度がおそくて迷惑だから禁止にしてるだけだろう。俺のNSはクルマより速い……」
と豪語する。
「悪法も法なり。」
と意地悪く言ってみても、
「オレはソクラテスは嫌いだ」
と、にべもない。
このあと、有田は家庭教師に行き、こちらは10時までロッテリアで暇つぶし。本日3軒目のファーストフード。再び有田と合流してからは、尼崎の健康ランドへ。
◆健康センターレポート
兵庫県尼崎市 あま湯ハウス
今回利用したのは、尼崎市にある"あま湯ハウス"。健康センターのネーミングセンスには危険な薫りのものが多いが、あま湯ハウスも、浜松市にある"ヘルシー愛ランドハッピー"とならんで、もっとも危険度の高いものといえるだろう。一元さんが電話帳で調べている限り、ここに電話をかけるというのは、かなりの度胸が必要である。
さて、"あま湯ハウス"はJR尼崎駅のすぐ近くに所在し、立地条件としては第一級である。ただこの近辺はバイクへの悪戯、盗難等が頻発している地域でもあるので、利用の際はUロックやカバー等で自衛することをお勧めする。
料金は入場料2000円、深夜料金1600円だから3600円で宿泊できる。深夜料が高めなので、編集部として付属のカプセルホテルをお勧めしたい。合計4000円で宿泊できる。(※注・97年当時)
風呂はかなりレベルが高い。露天風呂、薬仁湯、洞窟温泉、桧風呂等、10の風呂はどれも雰囲気たっぷりで楽しい。
料理は入場時間が遅かったために閉店となっており、残念ながらレポートすることができないが、焼き肉ジュージューができて、しかもキリンビール尼崎工場直送の生ビールときたら……今度来たときには是非とも試してみたい。小さいスナックなら深夜2時まで営業しており、われわれはここでお酒をこころゆくまで楽しんだ。
また、ここはパジャマではなく浴衣。カップルでツーリングの向きにも彼女の艶やかな浴衣姿がよろしい。
その他、前述のカプセルホテル、カラオケボックス、ゲームセンター、和室宴会場、ミストバスサウナ等あり。また、日替わりで、(月)ミルク風呂(火)ハーブ湯(水)紫根の湯(木)米ぬかオリーブ湯(金)よもぎ湯(土)どくだみ湯(日)ワイン風呂。
イベントも毎週日曜。速水和美等の演歌歌手が出演。日曜をねらって利用すれば、ツーリングも楽し。
★<入場料>2000円
★<深夜料>1600円
★<カプセル>2000円(この場合、深夜料は不要)
●兵庫県尼崎市長洲西通1丁目10番地48号
●06-489-1010 |
<本日の走行>691キロ
◆2日目・再び六甲
9時に目覚めると、有田はとなりのカプセルで黙々と勉強していた。健康センターをチェックアウトしたあと川西までいっしょに走ってから別れた。僕はふたたび六甲をめざす。
今回は有料道路を使って六甲の裏側からアプローチを図る。が、あちこち雪だらけで、めちゃくちゃ寒い。「チェーン必要」の表示ばかりで裏六甲からも入れない。
あきらめられず、西から入る。
森林公園を過ぎたあたりから路肩に雪が出てきて、なんだかだんだん雪の幅が広くなっていく。対向車線側にアイスバーンがあったりして、ひょいと横の池を見たら真っ白でないかい。おわっと思ったら、目の前の道が全面凍結。厚さ10?ぐらいの氷が石みたいになっている。もう断念。
帰りはルートをかえて、42号線を使い大阪へ。
今日は豊中の叔父に飲ませてもらうのだ。叔父は62歳だが、親戚の中では僕と弟以外の唯一のクルマ好き。ポルシェのディーラー営業を長くやっていたので、それはもうエンジンの話なんかでめちゃめちゃ盛りあがったのだ。
が、その叔父は最近ポルシェの仕事をやめたという。理由をたずねてみると、体力的にポルシェに乗れなくなったからだと寂しそうにいった。
「自分で乗れないと売れないんですか?」
「プライドがあるがな」
<本日の走行>134キロ
◆3日目・寒波の雪…どうやって帰る?
昨晩は深酒がすぎて朝から頭が痛い。
近畿地方各地でまだ氷点下のところが各地にあると予報が言う。京都は現在8?の積雪。冗談ではない。ホントに帰れなくなってしまう。11時に叔父に別れを告げ、出立。
とりあえず西名阪道を南下するが雲行きはきわめてわるく、霧雨がつねに降りかかってくる。天気予報では南海上を低気圧が通過しているという。本州最南端を誇る南紀も、今日は一時雪の確率ありとのこと。今回のツーリングでは、峠部門をまったくはずしてしまっていただけに最後を峠できちんとシメたいではないか。せっかくのバンクセンサーが泣く。
ままよとばかりに進路を和歌山へ。
しかし雲行きはますますあやしく、霧雨から小雨へ、そして海南市をすぎるあたりからはときどき雪もまじえた本降り状態。カッパを着こみ、せっかくのワイディングもウェットコンディション。
ところが! 光は田辺からやってきた。
南紀をぐるりとめぐる国道42号は、田辺・新宮間の160キロが本番コース。交通量も少なく、路面もよく、延々とくりかえされるコーナー、コーナー、コーナー。その素晴しさはこの国道の別名「死にGO!線」にも。
雨もやみ、気温も10度近く暖か。路面のコンディションもいい。
日本全国大寒波の中、バンクセンサーを削れる最高の贅沢。右に左にきっちり10回ずつで「あー、御馳走様!」。多くは求めない。
本州最南端、潮岬に着いたのは4時前。客は僕一人。土産を買い込む。
この日は新宮まで走り、過去通算3度目になるビジホテに泊まった。フロントのおばちゃんが、
「あー、何年か前、大きい単車で来た人かえ。顔覚えとるわ」
なんとなく僕は、この新宮という暗い町が好きである。
日本でもっとも降水量の多い地域であり、日本古来の熊野信仰のメッカ、また、暗い路地を描いた作家、中上健次の故郷でもある。どこか神話的霊的な重厚な空気が漂う。
しかしここも来るたびに少しづつ都会的で小奇麗な店が増えてきている。勝手な話だが少し寂しい。夕食はもちろんきたない店で、ちゃんと下駄にのった寿司を食べた。900円であった。
<本日の走行>344キロ
◆4日目・南紀発、一路東京
朝7時前に新宮を後にする。今日は帰るだけの一日。
国道42号をひた走り、津市に入ったあたりから混みはじめたので高速に乗り、あとはガスチャージだけの休憩で東名を走りきる。
それにしても、200あたりでサイドバッグがウイングのごとく水平になることを発見して驚いた。バックミラーに映るはずのないサイドバッグが、しかも真横になって堂々とはためいているではないか。何にも知らずこんな調子で走っていたのなら、馬鹿そのものという感じである。
午後2時過ぎに千葉の自宅に無事帰還。今回のミッションを終えた。
<本日の走行>672キロ

<ツーリングデータ>
●全走行;1,841?
●費用;49,659円(ガス12,347円、道路18,750円)
●平均燃費15.6?/?
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