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 次の日の朝九時に、僕は三歳の娘を連れて電車に乗った。二十分ほど電車で移動し、目的の駅に着いてから三十分ほど歩いた。途中で人造の小川があったり、ポンプの井戸があったりした。そのたびに娘は納得がいくまでその場所にとどまって、落葉を流したり、流れをせきとめたり、鉄製のポンプのアームを押したり引いたりして遊んでいた。
 抜けるような青空の秋日だったこともあって、雑誌に出ていたオートバイの中古車屋までの距離は少しも気にならなかった。
「同じバイク。」

 真っ先に気づいた娘が指さしていった。通りに面した、一段高いステージのような展示スペースに見慣れた緑色のナナハンはあった。ステージといっても、田舎の裏ぶれた小劇場に近く、ステージに立つのはせいぜい年季の入ったストリッパーだ。そして実際、そのナナハンは、華美な外見をまとってはいても、なかみは年相応にくたびれている。しかし、すでに五年前、駐車場に捨ててあったクズ鉄同然のナナハンを選んだ僕にとって、いまさら何かを恐れる必要などあろうか。
「同じバイク。どうしたの?」
 と、娘がふたたびいった。
「買おうかと思っているんだけど、君はどう思う?」
「どうして? おうちにあるじゃない。」
「燃えちゃったんだよ。」
「燃えちゃった?」
「そう。」
「燃えちゃったって、バイクが?」
 僕はうなずき、ずいぶん長い時間をかけてそのことを説明をしてやらねばならなかった。彼女にとってバイクが燃えるということは、どうしても頭で思い浮かべることができない事柄のようだった。
「つまりそういうわけで、僕はこのバイクを買おうかと思っているんだ。」
 彼女はうなずいた。
「ちなみにママは僕たちが何をしているか知らない。どこに来ているかもしらない。つまり……、」
 僕はゆっくり息を吸ってから、「君は、どう思う?」